『ストレスや心の不安から身を守る』ために (富田富士也)

親や先生、まわりの大人たちへ

 ストレスということばは、今や大人だけでなく子どもも使う日常語になってきました。あどけない小学生が、ちょっと斜に構えて『もうストレスいっぱいなんだよ。なんとかしてよ!』と大人顔負けのしぐさでいうのをきくと、『じょうだんじゃないよ、子どものくせに。そんなことばは働いてからいってよ』といいかえしたくなる親御さんや先生もいるのではないでしょうか。
ところがここ数年、子どもたちをめぐる悲しい事件や事故がたびたび起き、さらにその傾向が低年齢化をしめし、その背景には、こどもたちの鬱積した思いをうけとめる環境が失われていることが指摘されています。わかりやすくいうと、天真爛漫に成長できる空間が今の子どもたちには保障されていないということです。だから、「ガス抜き」の場がなくストレスがたまりにたまって、予想もできないような行動に出る子どももめだってきました。
人にとっての最大のストレスは人間関係であり、かかえる悩みのほとんども人間関係に関することです。そのことに大人も子どももありません。また人間関係が交錯する場としての仲間集団である学校と職場にも、差はありません。
人はひとりでは生きていけません。だから、仲間集団である学校でどのようにして自分を維持していくか、それはとてもストレスのかかることなのです。
ところが、ストレスの原因が人であるにもかかわらず、ストレス発散の最大の特効薬もまた、不思議なことに「人」なのです。不安、心細さ、ときに憎しみ、うらみ、やるせなさ、悲しみ…こんな思いを、人は誰かにひとまず、ただ「きいてほしい」のです。
弱音やグチしかいえない、あるいは悪態しかつけない。そんな自分から逃げないで「きいてくれるだけでいい」のです。そしてそんな機会は、多様な人々との絡み合いの中で生まれ、そのことで「ガス抜き」されていくのです。
子どもたちから弱音をはいてもらえる親や先生になっていきたいものです。

富田富士也著『ストレスや心の不安から身を守る』(ポプラ社刊)より